COVID-19患者の男女間免疫応答の違いの主要因?~男性では女性に比べてTfrの誘導が抑制されていた~A sex-biased imbalance between Tfr, Tph, and atypical B cells determines antibody responses in COVID-19 patients
大阪大学感染症総合教育研究拠点(ヒト生体防御学チーム)のJonas Nørskov Søndergaard特任助教(常勤)、Janyerkye Tulyeu特任研究員(常勤)、James Badger Wing准教授(免疫学フロンティア研究センター兼任)らの研究グループは、免疫細胞を一細胞レベルで高次元に解析できるマスサイトメトリーを用いてCOVID-19患者における免疫細胞応答を検討しました。それにより、COVID-19急性感染期には抗体産生を調整する濾胞性制御性T細胞(Tfr)の誘導が性別により異なり、男性では女性に比べてTfrの誘導が抑制されていることを世界で初めて明らかにしました。
- COVID-19急性期には、免疫担当細胞で構成される抗体産生ネットワークのバランスが性別により異なることを発見しました。
- これまでCOVID-19感染による抗体産生調整機構は不明瞭でしたが、マスサイトメトリーを応用することで明瞭化が可能となりました。
- COVID-19急性感染期には抗体産生を調整する濾胞性制御性T細胞(Tfr)の誘導が性別により異なり、男性では女性に比べてTfrの誘導が抑制されていることを世界で初めて明らかにしました。
- COVID-19重症化予測や新規治療戦略への応用が期待されます。
本研究成果は、米国科学誌「PNAS」(オンライン)に、1月20日(金)に公開されました。
Title
A sex-biased imbalance between Tfr, Tph, and atypical B cells determines antibody responses in COVID-19 patients
Authors
Jonas Nørskov Søndergaard, Janyerkye Tulyeu, Ryuya Edahiro, Yuya Shirai Yuta Yamaguchi, Teruaki Murakami, Takayoshi Morita, Yasuhiro Kato, Haruhiko Hirata, Yoshito Takeda, Daisuke Okuzaki, Shimon Sakaguchi, Atsushi Kumanogoh, Yukinori Okada, and James Badger Wing
DOI
https://doi.org/10.1073/pnas.2217902120

James Wing准教授のコメント
今回の研究は、様々な希少細胞タイプの頻発を同時に解決するために、精度の高い新しい方法を開発する必要があり、技術的に複雑なものでした。今回開発した技術は、現在進行中の様々な疾患の研究にも役立つと思われます。本研究で得られた知見、COVID-19に対する反応が性別で異なる理由を提供することで、社会に貢献できるものと期待しています。疾患に対する反応の性差を明確に理解することは、治療を行う際にその差を考慮する必要があることを理解する上で重要であると考えています。